涙の涸れる日

社会人そして失恋【回想】

 父親の会社に入社し、一か月の社員研修を他の社員と同じように終えた。

 その後は、長男の貴継兄さんに付いて直ぐに海外に行かされた。

 アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリアなど英語圏の国には必ず付いて行く。

 イギリスの英語はアメリカとは少し発音が違ったりはするが通じない程ではない。

 高校生の時にイギリスに留学させてもらっていたのも意味があったんだと実感した。

 樹里から五人での飲み会の誘いも来たけれど、その度に出張に重なって顔も出せなかった。

 イギリスに出張した時は時間を作ってホームステイさせてもらっていたデイビーズ家に顔を出す。

「コースケ。大人になったわね。良く来てくれたわ」
と大歓迎を受けた。

 それからもイギリスに行く度に時間の作れる時はデイビーズ家に必ずと言っても良いくらい寄っていた。

 ロンドン郊外のデイビーズ家は懐かしい故郷のような気がしていた。

 社会人になってそろそろ二年が経とうという頃……。




 二月……。

 紗耶から結婚パーティーの招待状が届いた……。

 紗耶の名前の隣には高梨佑真の名前。

 大学で派手に遊んでいた男の名前……。



 仕事ばかりで、この二年余り一度も会えていなかった。

 でもまさか結婚なんて……。

 気持ちを伝える事すら出来なかった。
 後悔しても、もう遅い。

 紗耶は結婚する。あの男と……。


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