涙の涸れる日

紗耶の気持ち

 高梨先輩と二人で会うようになった。

 大学の頃の茶髪にピアスのいかにも遊んでそうな軽い人……。

 私の先輩のイメージはそれだった。
 多分、間違ってはいなかったと思う。

 いつも綺麗な女性が周りを取り囲んで……。
 その中で楽しそうに笑う先輩の姿。

 お付き合いする相手に困った事など無いだろう。

 入学して一か月くらい経った頃に誘われた事がある。
 俗に言うナンパ……。

 正直ムカついた。

 見た目がカッコいいのは認める。
 でも、私は鑑賞用男子だと思っていた。

 中学高校と女子校で、他校の男の子と内緒でお付き合いしていた子たちも居たけれど……。

 私は、里香や樹里と居る方が楽しかった。

 男の子とお付き合いすることも無く、大学生になった。

 大学生になったら素敵な男の子と……。
 とも思わなかった。

 里香と樹里は合コンとか行ってたみたいだけど……。

 

 高梨先輩とは、その後、話し掛けられる事もなく、私の大学生活は学業だけで充実していた。


 私には兄がいる。国立大学の法学部で法律の勉強をしていた優秀な兄が。

「弁護士になれば?」
って言ったら
「親父の会社を継ぐのに法律も必要だと思ったからだ。片手間に弁護士が出来る程、簡単じゃないんだよ」
と言われた。

 妹の私から見ても、背も高く、サラサラの私に似た少し茶色く見える髪をかき上げる姿はなかなかカッコいいと思う。

 友達に言わせると、この兄が
「シスコンで、紗耶にばかり構い過ぎ」
だそうだ。

 でも私は、この兄 凌太しか知らないから、良く分からない。


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