涙の涸れる日
 八月に入って、佑真が帰宅して直ぐに

「ただいま。七月の営業成績トップになったよ」

「凄い。おめでとう」

「ありがとう。紗耶のお陰だよ」

「私は何もしてないよ」

「紗耶が居てくれるだけで頑張れるんだよ」

「そう言ってもらえると嬉しいけど……」

「紗耶は俺にとって幸運の女神なんだ」

 佑真に抱きしめられる。私も佑真の背中に腕を回す……。

「これから、もっと頑張るから」

「頑張り過ぎないでね。佑真の体が心配になる……」

「俺ってタフに出来てるの。紗耶が一番良く分かってるんじゃないの?」

「もう……。佑真……」

「そういう紗耶の表情がそそるって、まだ分かってないね。まあ、そこが可愛いんだけどね」

「そそるって……」

「そういえば盆休みがもうすぐだけど、どうする? 旅行は今からじゃ無理か……」

「えっと、高梨家は何か特別な事をするの?」

「親父たちが、墓参りするくらいじゃないかな」

「高梨家のお墓って遠いの?」

「いや、実家から車で三十分もあれば行けるよ」

「お墓参りに行ったらいけないかな?」

「ただのお墓だよ」

「うん。でもいつか私も高梨家のお墓に入るのよね? だからご先祖様にご挨拶しておきたいなって……」

「そうか……。そうなるんだな」

「結婚って、そういう事でしょ?」

「分かった。母さんに連絡しておくよ」

「ありがとう」

「紗耶って本当に良い嫁さんだな。親父たち喜ぶよ。本多家のお墓は近くにあるのか?」

「ううん。家のお墓は名古屋にあるの」

「へぇ。本多家は元は名古屋なんだ」

「そうみたい。でも私のお祖父ちゃんからは東京だけどね」


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