涙の涸れる日

クリスマス

 夏が終わって、秋も過ぎて、冬になった。

 佑真の仕事は相変わらず忙しく、特に年末になって接待とか、会社の忘年会とか、営業先の忘年会に呼ばれる事もあって……。

 クリスマスなんて無理よね。
 子供じゃないんだし……。

 それにクリスマスイブは平日だし……。

 パスタにしよう。
 それと小さなケーキを買って……。

 忙しく働いてくれている佑真に我儘は言えない。

 クリスマスプレゼントに佑真に似合いそうなマフラーを買った。

 クローゼットの奥に仕舞っておく。

 そういえば去年もクリスマスは何もしなかったな。
 結婚の準備に忙しくて……。

 佑真が元気にお仕事をしてくれるだけで幸せだと思ってる。

 だからクリスマスの事は言わなかった。
 
 クリスマスイブの朝。

「きょうも遅くなる。いってきます」

「いってらっしゃい」

 佑真とハグをして髪にキスされる。

 それだけで幸せな気持ちになれる。

 普通に家事をして、買い物に行って……。

 今夜はペスカトーレを作った。
 小さなケーキも忘れずに買って来た。

 佑真がクリスマスの事に触れなかったら、明日一人で食べよう。

 九時を過ぎた。寒い季節は湯冷めしそうで佑真の帰宅が遅くても寝る前にお風呂に入る。

 きょうも一人で夕食か……。
 と思った時……。

「ただいま。遅くなってごめん」

「おかえりなさい。えっ? 何が?」

「今夜はクリスマスイブだよ」

「うん。でも今朝も何も言ってなかったし、去年もクリスマスはしてないし……」

「年末は忙しくて早く帰れるなんて無責任な事は言えないから」

「うん」

「ワイン買って来た。一緒に飲もう」

「ありがとう。佑真。無理して仕事終わらせて来たんじゃないの?」

「頑張って片付けて来ただけだよ」

「嬉しい……」

「今夜は何?」

「ペスカトーレ作ったの」

「じゃあ白ワインで正解だったかな?」

「魚貝のパスタだから合うと思う。ありがとう」

 マフラーも喜んでもらえた。
 クリスマスも佑真と幸せな時間を過ごせた。


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