脆姫は過去に生きる
「今のそなたが、咲が、いいのだ。私が選んだ。」
その言葉にすべてが込められているとすぐにわかる。

この言葉に、鉄王の私への想いが溢れている。

「私も、今の鉄王が好きです。この命にかけて、あなたのそばでできる限りのことをします。隣に居させてください。」
鉄王は微笑み私を抱きしめる。

「この日が来ることが私にとって夢のようだ。幼いころ、咲と出会ってからずっと夢であった。この日が来ることが。あの頃の記憶がなくても、そなたが生きて来た記憶が私の知る咲と違っても、心惹かれることは変わらない。今もそなたを見つめるだけで私の心は落ち着かない。思いが溢れて、感情が乱れるのは、そなたにどうしようもなく心惹きつけられるからだ。冷静でいられない。」
今の私にはもったいないくらいの言葉。

「泣かせないでください。せっかく用意したのに・・」
私はそう言って涙をごまかした。
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