脆姫は過去に生きる
「泣いてんのか?どうしたんだよ。全く。おーい、咲菜~?顔見せろ。」
鉄平の体に抱き着いている私の顔をグイっとあげて、鉄平が私をみる。

「本気で泣いてんのかよ」
大きな手で私の涙を拭う鉄平。
その手のぬくもりもかわらない・・・

「泣きすぎ。具合悪くなるぞ?せっかく治ったのに。」
鉄平の言葉に私は思わず聞き返した。

「へ?」
「へって。とぼけんなよ。せっかく新薬が体に効いてこんなにも体調が回復してんのに、もったいないだろ。大事にしないとな。油断大敵だろ。」
この夢はあくまで私に都合のいい夢なのかもしれない。

違う。

こんなこと現実の世界ならありえない。

きっと死んでしまったんだ。
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