恋に焦がれて鳴く蝉よりも
 貼り付けてあったSNSを読んで、あなたが近く
にいることを知りました、と。あなたがよく足を
運ぶその緑道公園は、自分にとっても癒しの場所
です、と。正直に綴ってしまっていいのだろう
か?

 蛍里はそこまで考えて、唇を噛んだ。

 もしかしたら、自分の身辺のことまで詮索し
立ち入ろうとする蛍里を、彼は不快に思うので
はないか?

 決して必然ではないにしろ、蛍里は詩乃守人の
素性を知りたいと思いながらSNSを覗き、そこで
彼の生活圏を突き止めてしまったのだ。

 付き(まと)う気などまったくなくても、
相手に気持ち悪いと思わせてしまうかもしれ
ない。

 蛍里は書き込んだ宛名を消して、パソコンを
閉じた。



----嫌われるのが、怖い。



 せっかく、あなたと繋がっていたいと、そう
言ってもらえたのに、それ以上を求めたせいで
この関係が終わってしまうのが、どうしても
怖かった。

 蛍里はベッドに躰を預け、枕に顔を埋めた。

 目を閉じた瞼の裏に、知らないはずの、
その人の顔が浮かぶ。

 会いたい。会って、話してみたい。

 一度芽生えてしまったその想いは、簡単に
消えてくれそうになかった。



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