私らと、ざまぁするぞ!〜冤罪で追放された令嬢に手を差し伸べたのは異世界の戦士たちでした。


聖威の目の先はなんと、あの韋駄天様だった。

韋駄天様が、来賓席から離れて試合場の向こう、すぐそこを普通に歩いているではないか。

大会中、来賓席から一歩も動かなかったのに、いつの間にそんなところに?!



剣術大会も終わって、私たちも取り敢えず終わり……だなんて、油断して気が緩みかけていた。

そこを逃さないのはやはり、軍人の眼というか……あんなバカな考察並べて嘲笑していても、任務中と自覚していたのか。

やはり、聖威は凄い。



動き出した韋駄天様は、試合場の方へと歩いて行く。

……だが、私はそこで少しばかりの韋駄天様の異変を感じ取るのだった。



まるで少し急いでいるかのように、韋駄天様は早足だ。

しかも、単独。……天部衆の武官という高き身分の韋駄天様が、護衛の者を付けずに。

そして、試合場の傍らに集まっている天子様や竜樹様の横を何の声掛けもせずに通り過ぎていった。

その一連の行動に、私は驚かされる。



韋駄天様は、悠然としていて気さくな御方。

こんな一人でそそくさと隠れるように、早足で歩いたりはしない。

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