猫かぶりなカップル
「お前は?」

「ん?」

「なんでそんな自分偽ってんの?」

「あたしは…嫌われたくないからかな。嫌われるのが何よりも怖くて、みんなに愛されたくて、それでちょっと良い子ぶりはじめたら、どんどんエスカレートして、周りもどんどんあたしのこと好きになってくれて…。止まらなくなってた」



ある意味、周りからの評価に依存しちゃってるんだよね。



もうやめ時がわからないもん…。



って、あたしなんでこんなこと神城に言ってるんだろ…。



今まで聞いてくれる人なんて、当然いなかったからかな…。



「まあ進んで嫌われたい人はいないわな」

「…」

「俺は嫌われてもまあ別にって感じだけど、そう思えない人がいるのも理解できる」



『嫌われたくない。みんなに好かれたい』って感情を否定されると思ってた…。



そんなの不可能だ、諦めろって、言われると思った。



分かってくれるんだ…。



なんだかすごく嬉しかった。



あたしという人間を受け入れてもらえてる気がした。



「ケーキも奢ってあげようか?」

「犬から奢られる筋合いはねえよ」



結局まだ犬扱いだけどね…。



でもやっぱりなんだか嬉しい気分でそのまま家に帰った。



「ただいまー」

「おかえり」



家に入るとママ。



今日は珍しく早い時間に家にいる。



キッチンでは夜ご飯を作ってて。



「良い匂い。今日のご飯なに?」

「肉じゃが」

「やったー」



隣に立って横目でちらっとママの顔色を見ると、なんかイライラしてるっぽい。



多分彼氏となんかあったんだろう。



ママはすぐ恋愛に左右されるから一緒に暮らす娘としては困る。



さっきまで良い気分だったのに一気に嫌な気分になった…。



あたしに八つ当たりとかはしないけど、ママの気分が落ちてるときは家の空気が淀むから本当に嫌いだ。
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