猫かぶりなカップル
セイウチとアシカのショーが終わって、最後にまたイルカ。



ジャンプしたり色々な技を見せてくれる。



「すげえな」

「すごいね!」



そして、ひときわ大きなジャンプ…。



水面に着地した瞬間、はねた水があたし達を襲ってきた。



「…」



びしょ濡れ…。



「お姉さん達濡れちゃいましたねー! みんな、お姉さんとお兄さんにごめんなさいしてー!」



飼育委員さんがイルカに言って、イルカがあたし達にぺこっとお辞儀した。



その様子が面白くて、気づけば笑ってた。



不思議となんだか楽しい。



いつもだったら怒ってたかも…。



あたし、このデート楽しんでるんだ…。



ショーが終わって、係の人があたし達にタオルを渡してくれた。



「えらい目遭ったな…」

「でも楽しかったね」



あたしがそう言うと、神城はふっと笑った。



「セイウチも活躍してたしな?」

「あっ、セイウチ可愛かったね」

「俺のことバカにすんのやめたのか?」

「セイウチは可愛かったけど神城は全然かわいげなーい!」

「本当うるせえなお前は…」



神城は、あたしの髪の毛のタオルを、両手で強めにゴシゴシと拭いた。



その様子を、係の人がニコニコと見てる。



「なにか…?」

「いえ、微笑ましいですね。お似合いです」

「お似合いじゃないです!!」



神城とハモってしまった。



見た目だけは超お似合いだと思うけどね…。



大分乾いたので係の人にタオルを返した。



見るところもなくなったので、スーベニアショップを通って帰る。



ここを通らないと出口に出られない設計だからね。



近場だし別にお土産を買う人もいないので素通りしよう。



でも、お店を通ってたら、神城が足を止めた。
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