猫かぶりなカップル
神城に電話をかけると、3コールくらいで「どうした?」という声が聞こえた。



その声にほっとして、気がついたら余計に泣いていて。



涙止まらない…。



「おいおい…。まじでどうした?」

「ひっ…う、ちょっと…足…ひね、った…」

「…今どこだよ?」

「わかんない…」

「わかんないってお前…」

「適当に歩いて…来たから…」

「はあ…。近くに何が見えんの?」



近くの特徴を伝えた。



神城は「だいたい分かった」と言った。



「今から迎えに行ってやっから大人しくそこで待ってろよ」



そう言って電話が切られた。



あたし、情けないな…。



でも、来てくれるんだ…。



どこまで優しいんだろう。



近くの公園のブランコに座ってうつむいていたら、しばらくして目の前に影が降りた。



顔を上げると神城。



「お前ほんと俺に感謝しろよ?」

「うん…」

「足、大丈夫か?」



そう言ってあたしの足下にしゃがむ。



「そこまで腫れてねえしこんくらいならすぐ治りそうだな」



神城の優しさにまた涙がこみ上げてきた。



「泣くなよ…」

「だって…」



神城に、さっきのことを全部話した。



黙って聞いていてくれる神城。



全部聞き終わったあとに、「頑張ったじゃねえか」と言ってあたしの頭を軽く撫でた。



「頑張ったって何が…」



あたしが言うと、そっと両手であたしの顔を包み込み、あたしの涙をぬぐった。



「全部のこと。お前、いつも頑張ってんじゃん」

「そうかな…」

「いつでも猫かぶってられるお前が、母親とその彼氏の前でそうやって涙流したのも、普段努力して、色んなことに耐えて頑張ってるからこそあふれ出たんだろ」



神城の言葉は優しい。



あたしの心にすっと溶け込む。
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