猫かぶりなカップル
まあ、彼氏…というかなんというか。



お互いプライドのためだけに付き合ってる、ほぼセフレみたいな男。



このくるみ様が彼氏いないなんてあり得ないでしょ?



たまーに会ってエッチして、カモフラージュ用に一緒に写真を撮ってバイバイするだけの関係。



みんなにはまだキスもしてないことになってるけど。



嘘まみれのあたし…。



本当は恋もしたことないのに…。



放課後になって、久しぶりに彼氏と会う約束。



もっぱらラブホだけど。



彼の大学の近くで、知り合いがいないようなところ。



万が一知り合いに遭遇したら最悪だ。



「久しぶり~」

「おー」



関係が淡泊すぎて、待ち合わせはラブホ前。



先にホテルの前でスマホをいじってる好青年風イケメンがあたしの彼氏だ。



こんな自分、嫌だなあ…。



この男の前では猫をかぶらなくて良いのは楽だけどね。



あっちもあたしの顔と身体にしか興味ないもん。



いつも通り2人でホテルに入った。



受付をすませて、エレベーターに乗る。



別にエッチしたいわけじゃないけどね…。



相変わらず隣でスマホを見ているこの男の横で、エレベーターの『閉』ボタンを押そうとした。



「あっ…待って! 乗ります!」



そのとき、受付の方から女の人の声が聞こえた。



あたしは慌てて『開』ボタンを押す。



そして、女の人が男の人を引っ張るようにして乗り込んでくる。



「お前いてえよ。次のでもいいだろ、急ぎすぎ」



女の人に男の人が文句を言う。



ん? 聞き覚えのある声。



えっ知り合い!?



あたしは慌てて男の方を見た。



そして、息を飲む…。
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