猫かぶりなカップル
「あれ、くるみちゃん、王子は?」

「あっ、用事あるから先帰るって言ってたのすっかり忘れちゃってたんだ」

「もう~、くるみちゃん、抜けてるんだから~。一緒に帰ろう!」

「うん!」



そんなことより奏に電話したいのに~…。



ウズウズしながらなんとか笑顔で親衛隊達と会話を続けた。



無意識にきょろきょろして奏の姿を探してしまうけど、奏はいない。



そして、ようやく最寄り駅に着いた。



「じゃあね、くるみちゃん!」

「うん、また明日ね」



やっと解放された~…。



電車を降りて、すぐに奏に電話した。



しばらくして奏が出る。



《どうした?》

「今どこ?」

《んー、ちょっと遠いとこいる》

「なんでそんなとこいんの?」

《ちょっとな》



電話の向こうの声は少し響いてる。



マンションの廊下的なとこ…?



でもそんなことより!



「ねえ聞いて! 試験どれもめちゃくちゃ点数上がった!」

《まじか! すげえじゃん》

「へへ! 奏のおかげ!」

《いやお前が頑張ったからだろ》

「そう言うと思った~!」

《よく頑張ったな》



電話越しの声が優しい。



奏に会いたいな…。



会いに行こうかな…。



「ねえ、かな…」



勇気を出して口を開き、会いたいと言いかけたそのとき、



《奏くん! 部屋に忘れ物してたよ~》



あたしの声にかぶさるように、電話の向こうから女の人の声が響いた。
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