食堂の白井さんとこじらせ御曹司
 事務所の奥のパーテンションで仕切られた場所にはソファセットが置いてあり、片側に二人の女学生が腰かけていた。
 声をかけると、立ち上がってお辞儀をしてくれます。
 うん、礼儀正しい子たちのようです。真面目に生きてきたというのが一目でわかる服装をしています。
 肌のあまりでないシャツとロングスカート。たくさんの教材が詰まっていそうな大きなショルダーバック。パーマも染色もしたことがなさそうな髪の毛を後ろで一つに結んでいます。それが村上さん。
 横山さんは、黒いTシャツに黒いズボン。髪の毛はショートカットで、少し男の子っぽい雰囲気があります。
「食堂の白井です」
 テーブルの上に袋を置きながら自己紹介です。
「え?」
 驚きの声が返ってきました。
「食堂の、白井さん?って、あの?」
「あの?」
「いつも、掲示板楽しみにしてます」
 ああ、あのって、そのことでしたか。
「ありがとう」
「えっと、どうして白井さんが?」
「学生相談室の相談員は男性なので、化粧は分からないからって頼まれたのよ。えーっと、これ、学生相談室の人が買ってきたものなのだけど」
 ちょっと乱暴かなとは思ったんだけど、袋をさかさまにして中身を全部テーブルに出す。
「え?」
「化粧って、こんなにたくさん必要なのですか?」
 ソファに腰かけて、リュックから化粧ポーチを取り出す。
「そんなに必要ないわよ。ただ、もっときれいに、もっとかわいくって、どんどん必要なものが増えていくこともあるんだけど……それは少しずつ覚えていけばいいと思うので、まずは……」
 化粧ポーチをの中身を一つ取り出す。
「あ、そうだ、二人ともアレルギーとか、肌が弱いとかない?大丈夫かな?」
「大丈夫です。えっと、自分でも化粧品を買って試したこともあるので……」
 そうか。やってみたけどできなかったのね。だから学生相談室にSOSを……。
「持っているものがあればそれを使えばいいからね。今日は、手元にないものは、ここのものを使えばいいから。まずは、探してみて。下地とファンデーション」
 化粧ポーチからいつも使っているイエロー系化粧下地とオークル系パウダーファンデーションを取り出す。
「下地?」
 横山さんが首を傾げました。
 そうですよね。うん。黒崎さんレベルの知識スタートですよね。
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