食堂の白井さんとこじらせ御曹司
 大学への申し送り……は、必要ないですね。

 はい、今日も終わりました。これを張り出して、申し送りを学生相談室に出しに行ったらおしまいです。
 時計の針は29分。
 タイムカードを押すころには30分をだいぶ過ぎそうですね。まぁいいでしょう。誤差の範囲です。

 荷物を持って学生相談室へと向かいながら、神様に祈ります。
 どうか、黒崎さんと会いませんように……。
 今日は、ドアをノックせずに用紙を相談ボックスに入れましょう。今までだってそうしてたのですから、構わないですよね?
 渡り廊下に差し掛かると、渡った先に人影が見えました。
 思わず身を隠します。
 あれは、黒崎さんと菜々さんだ。
 ……そういえば、前も二人が一緒にいるところを見ました。
 ちらりと顔を出して二人の様子を見ます。
 菜々さんがスマホを取り出して何やら見ています。それを、黒崎さんがのぞき込もうとして、菜々さんがすっとスマホを胸元に持っていきました。
 その様子をアフレコすると、きっとこんな感じです。
「見せて」「だめ!これはないしょなの」「いいだろ、見せてくれって」「もー、仕方ないなぁ……うーん、でもやっぱりだめ!」「なんだよ、ケチ、ちょっとだけな?」「だめなものはだめ!」
 うーん。なんとうのでしょうか。
 距離感が近い感じがします。
 大学職員と学生という感じではなくて……。
 あれ?もしかして、二人は、その、前に邪推してしまったような、特別な関係なのでしょうか?
 えっと……。
 菜々さんは和臣さんと付き合っているわけでは……ないのでしょうか?
 前カレだったかもしれないけれど、今カレである可能性は、ないということなのでしょうか……?
 もう一度だけ、そっと二人の様子を見てみようと、渡り廊下の向こうに視線を向けると、黒崎さんが両手を合わせて菜々さんを拝んでいました。
 菜々さんの様子にアテレコするなら「しょうがないなー」という感じでしょうか。
 ……。
 いつまでも見ていても仕方がありません。2人を避けるコースで学生相談室に向かいそっと相談箱に紙を入れて、さっさと立ち去ります。
 職員通用口でタイムカードを押すと、スマホが鳴りました。
 あ、ライン。
 菜々さんからです。
 もう、黒崎さんとは会ってないのでしょうか?
「結梨絵ちゃん、金曜の夜って、暇かなぁ?」
 金曜の夜?
< 95 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop