独占欲強めな御曹司は政略妻のすべてを奪いたい
独身の伯父は父亡き後、私と母を支えてくれた心の優しい人で、私が結婚することで伯父の会社のためになるのなら願ってもない話だった。

お見合い相手の透哉さんと最後に会ったのは、まだ父が生きていた頃だから十年くらい前だろうか。たしか彼は私より四歳くらい年上だった。

父が大好きだった私はしょっちゅう父の仕事についていき、社交の場で何度も透哉さんと顔を合わせた。透哉さんもまた、大グループの後継者として、彼の両親によく同行していたのだ。

当時、透哉さんは私の父をとても慕っていて、父もまた彼を将来有望な青年だと褒めていた。私はふたりが楽しそうに話しているところを眺めるのが大好きだった。

けれど父が急逝し、私の生活は一変した。

父の会社はあっという間に倒産し、たくさんいた使用人もひとり残らず解雇となった。なにもかも失い唯一残ったのは、今住んでいる屋敷だけだ。だからもう透哉さんに会う機会など二度とないと思っていた。

それなのにまさかこんな形で彼と縁がつながっていたなんて。

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