独占欲強めな御曹司は政略妻のすべてを奪いたい
目を覚ますと、ベッドのふちに背中を向けて座る透哉さんの姿があった。

マンションに帰ってきたときはまだ昼前だったが、すでに寝室は薄暗く、まもなく夜になろうとしている。

「透哉さん……」

小さな声で名前を呼ぶと、彼が振り返った。

その顔には悲しみが満ちていて、胸を締めつけられる。

私は透哉さんを怒らせて、傷つけたのだ。

「本当に申し訳ありませんでした。透哉さんの妻としての自覚が足りませんでした」

私は誠心誠意謝った。

ガールズバーで働いたのも、森窪さんに対して無防備だったのも、なにもかも軽率だった。

私が愚かなせいで透哉さんに不快な思いをさせてしまった。

「森窪さんとはなにもありません。どうかそれだけは信じてください」

「あいつとなにもなくたって、俺はもう君を縛りつけることにした」

「え……?」

「体だけじゃなく、心ごと俺のものになれ」

至近距離で射貫かれ、私は瞬きを忘れた。

「俺を愛すんだ」

命令口調とは裏腹に、彼は私の頬を長い指で優しく撫でながら焦がれるように目を細める。

< 98 / 128 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop