隣の圏外さん


 言っちゃった。言っちゃったよ。


 公園を出てたところでひと息ついて、今度は歩き出す。


 ガコン、と近くでゴミ箱に何かを捨てたような音がした。

 きっと梓が缶を捨てたのだろう。


 そう言えば、梓の返事を聞かないまま出てきてしまった。

 もしやこれって、困らせるだけの良くない告白の仕方なのでは?


 ふとそのように思い至った瞬間、後ろからぎゅっと抱きしめられた。


「待って。逃げるなんてずるい」

 耳元で梓の声がする。


 鎖骨らへんに回された腕が、梓のものだと知って頭の中が真っ白になった。

 何も考えられなくなる。


「って言うか、彼女? 他に好きな人? いるわけないじゃん。ずっと永瀬のことが好きなのに」


 幻聴かと思わずにいられない。

 本当に? 先輩は?

 疑問は頭の中に浮かぶだけで、音になって出てこない。

 沸き立つ心を抑えるだけで精一杯だ。


「俺も、永瀬のことがずっと好きだった」

 回された腕に力が入り、よりいっそう強く抱きしめられる。


 これは現実なのだろうか。

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