親友に「花嫁を交換しよう」と言われまして
三ヶ国が、友好国として良好な関係を続けていける、その基盤を作る。
俺の代でそれを成したい。
そう考えていたが、入ってきてすぐにたかわらい……これは、俺の願いは——。
「え! カワイーーー! なんだその肩に乗ってるカワイイ生き物は! 魔物? 魔物?」
「これか? これはアリスだ! うさぎ、というらしい!」
「えー、カワイー!」
…………。
え?
「……」
絶望を感じた。
その直後である。
エルマ皇女がすごい速度で駆け寄ってきて、フォリアの肩に乗っていたアリス様を見上げた。
からのこの態度。
お付きの従者たち、入り口のところで置いてけぼり。
「カワイイ! カワイイ! 触りたい! 触りたい! 触っていいか!?」
『お断りよ!』
「ガーン! 断られた! 断られた!」
「断られたな! アリスが嫌というのでは仕方ないと思う!」
「そうだな!」
「…………」
ノリ、似てるね?
フォリアと、エルマ皇女……。
若干エルマ皇女の方が幼い感じがするが、それは年相応ってことだろうが。
従者の人たちの方を見るとハッとしたような顔をされ、その後肩をすくめられた。
え、なにその態度。
その上五人のうち二人は「あとはよろしくお願いします」とばかりに丁寧に頭を下げられた。
ちょっとそのお辞儀どういう意味ですかね?
「フォリア、まずご挨拶しないと」
よし! なんかやばそうだから流れを修正しよう。
そもそも挨拶は招待客側が主催に行うものなのだが……せっかく近づいてきてくれたのだからこれを利用しない手はない。
「そうだった! 私はフォリア・エーヴァスだ! リットの奥さんだぞう!」
なんでドヤ顔?
しかも胸まで張って……。
「……」
なんか満更でもない気持ちになるのは、なんだろうな?
恥ずかし……。
「そうか! わらわはエルマ・クォーンだ! 帝国の皇女だぞ!」
「よろしくな!」
「おう! よろしくな!」
実は血の繋がった姉妹とかではないよね?
「で? そっちのはなんだ?」
「あ、わ、我らはシーヴェスター王国王太子アグラスト・シーヴェスターと俺の妻、ミリー・シーヴェスターだ。本日は帝国の姫君に会えると聞いて、楽しみにしていた。よろしく頼む」
「おう、貴様がシーヴェスターの王太子か! ではこっちのお前が主催のエーヴァス公国のリット・エーヴァスか!」
「ああ、よろしくお願いします」
頭を下げるととてもいい笑顔で「おう!」と言われたんだが、あの「ひれ伏すがよい!」発言は一体なんだったのだろう?
「兄様……」
「あ、そうだ。アグラストとエルマ皇女に弟も紹介しておきたい。弟のハルスだ」
実はアグラストにハルスを紹介したことがない。
なので、まとめて紹介しようと今日出席させていた。
今までは人の多い場所は、埃が舞ってあまりよくなかったんだが……今は体調も整っているから、大丈夫だろう。
「はじめまして、ハルス・エーヴァスと申します。お会いできて光栄です、アグラスト様、エルマ皇女」
ずっと弟をアグラストに紹介したかったのだが、念願叶ったな。
どうだうちの弟は。
とても賢くて優しくて気が利く子なんだぞ。
アグラストはすぐに「話は嫌というほどリットに聞いている。よろしくな」とハルスと握手する。
うん? なんだその言い方は。
「え! すごい好みなんだが!」
と、叫んだのはエルマ皇女である。
耳がつんざくような声だったのだが、普通そんなことを大声で言わんだろう。
ちら、と従者の人たちのを見るとニコ……と優しく微笑まれた。
そしてまた頭を下げれた。
見間違いでなければ諦めた人間の微笑みだったんだが?
「え? はい?」
「え、お、お、お、お前か、カワイイしかっこいいな……! わ、わらわの周りにはいないタイプで……え、え、え、ど、ど、ど、どうしたらいいんだこういう時……!」
そして突然右往左往し始める。
頬を包むように両手を当てて、ぐるぐると回転しはじめたエルマ皇女。
時折ハルスをチラ、チラ、と見て、また顔を赤くする。
え、えーと?
こ、これは?
まさか? まさかそんな、こんなわかりやすく……?
俺もチラ、とエルマ皇女の従者たちを見る。
すると従者たちも「ヤベーもん見た」みたいな顔してボケッと突っ立っていた。
しかし俺の視線に気がつくと、真ん中の一人がハッと我に帰る。
ちょっとあの人たち大丈夫ですかね?
まさか顔面だけで従者決めてないよね? ね?
「…………」
え、えーと……顔を覆われてしまった。
なんだこの空気。
「もしかして……エルマ皇女殿下はハルス様に一目惚れなさったのですか?」
と、どストレートに聞いたのはミリーである。
しかしどうやらこれが当たりだったらしく、エルマ皇女は跳ね上がった。
「ひ、ひ、ひ、ひとめぼれ……」
「っ」
ええ、これどうしたらいいの?
チラッ、と斜め後ろを見ると、ハルスも盛大に困惑顔。だよね。
「ここはわたくしにお任せください」
と、突然ドヤ顔になるミリーは、今日一いい笑顔になると——。
「エルマ殿下、まずはあちらで一息つきましょう?」
「う、うんっ」
「あ、ケーキあるぞ!」
そう、ケーキや軽食が置いてある場所に誘導していく。
俺は思わずハルス、アグラストと顔を見合わせる。
「で、出出しから波乱だな……」
「胃が痛い……」
「に、兄様、しっかり!」