この恋は狂暴です
バンッ!!
「・・・っとに、なんなんだ!あの女っ!!!」
俺は部屋につくなりカバンを壁にぶちつけた!


「まあまあ、そこがいいじゃん♪」
後ろでそうつぶやく俺の親友。
「は?信じられね、お前、あんな言われ方されてっ・・!」
俺の激怒は止まらない。

「ん-・・・まぁ俺・・、あーゆートコロも含めて好きになったんだし♪」
と、ニコニコ笑う。
「―――――――・・・っ!!!」


俺、藤木薫。
この激語の発端は、ほんの30分前。
俺の親友、火野桃弥(このニコニコ笑っている奴。)が片思いしているという女に告るという所から
始まった。
なんでも中学時代の同級生で3年間も片思いしていたらしい。
(俺には無理!)
同じ高校に通うなんて思ってもみなかったらしく、又さらに、高校1年間片思いは続いたらしい。
(俺には絶対絶対無理!!)

だが、さすがに桃弥にも我慢の限界があるらしく(笑)
・・・今年、高校2年目にして、やっと告る決意を決めた。

そして、放課後。
桃弥の想い人のクラス前に俺は来た・・。
桃弥とその片思いの彼女が二人になれるよう、俺はセッティングを頼まれたんだ。


「なな。」
一瞬、そのクラスの女共が騒ぐ。
「きゃ藤木くん!!」 「え?やだ超、カッコいい~」
俺は一応、外見がいいらしく女から人気がある・・・。

「いや~ん、薫くん♪なになに?」
名前を呼んだそいつも、俺のファンらしく常につきまとっては「なな」 「ななね~」って
自分の事を言うから名前を覚えてしまった・・だけの女。

女なんて皆、同じ顔・・同じ声だし。

「ちょっと頼まれてくんない?」
そんな俺のセリフにこれでもかといわんばかりに首を縦にふる。


「はたの・・って子いる?」

「え?あ・・え?乃野さんの事?」

へ―・・桃弥の片思い女、乃野って言うんだ―・・・ 
・・・ん?
乃野・・・・・・ ?
・・・ってどっかで聞いたことある・・なぁ・・

「薫くん?」
「あ、うん。そいつ。」
「が――――んっ・・・そりゃ乃野さんはキレーだけど・・・薫くんやめといた方がいいよ?」
何を誤解したのか、ななは俺にそう言った。
「ふっ。いや俺じゃなくて、はたのさんに用があるのは他の奴。」
そう言うと、ななはパーッと笑顔を見せた。

「で、薫くん。ななは何をすればいい?」
「ん―。とりあえず、はたのさんをこの教室に一人にしといてくれれば。」
「了解。」
「助かる。」

こうして俺は、ななにまかせ自分の教室へと戻った。
桃弥は教室の壁にもたれて外を眺めていた。
顔はこわばっている。
だよな・・・なんてったって4年間も片思いしてたヤツに告るんだもんな。
緊張もするよな。

そんな事を考えながら教室に入ると、桃弥が俺に気づいた。
「薫。」
「今、彼女、教室に一人でいる様にしてもらってるから、もう少し待って」
「サンキュ・・。」
桃弥の顔に又、緊張が加わった気がした。

「桃弥~緊張してるっしょ!かわいいな~♪」
俺はわざとちゃらけた。少しでも緊張をとけるように・・
「ばっ!ばっか!ちげーよっ、全然っ。」
そう反論して桃弥は顔を赤めた。

「でもさ、なんでわざわざ学校で告るん?彼女の家でも良かったんじゃね?幼なじみなんだし、
部屋とかも、上がったこともあんだろ。」
「・・・・あ・・ああ・・しょっちゅう・・な。」
「俺だったら2人っきりの方が落ち着くけどなー」

「ふ。俺も相手が姫じゃなければ、そうしたかもな。」
「そ、そんなに強敵なのかよっ?」
「ああ、ハンパなく♪だから・・学校だったら返事がNOでも逃げ場があるかなーと思ってさ」
「はー?バッカ!何そんな心配してんだよっ!桃弥なら100%大丈夫だって!!」

「薫・・」

「4年だもんな・・がんばれよ。」

「お・・う。」


こんなに思って・・こんなに一途に想い続けて・・こんなにがんばってきた桃弥。
絶対に大丈夫だ。うまくいくにきまってる。

そんな話をしていると、俺らのいる教室にヒョコっと、ななが顔を出した。
「薫く~ん。OKだよ~ん♪」
  

いよいよだ―!!

「なな、ありがと」
「どういたしまして♪ななは、薫くんのためだけに生きているから♪」
「はは・・」

「じゃね薫くん!なな帰るね~」


「お・・おう、またな」

ななのすごいところは見返りを望まないところ。普通の女であれば、頼みごとをすれば、しただけ何かを求めてくる。
だからななは楽だ。
だからついつい人を選んで頼みごとをしてしまう。

ずるいな・・俺。


「薫、じゃ俺も行ってくる。」
壁から体を離して、桃弥は彼女の教室へと向かった。

俺はというと・・
やはり親友の事は気になるワケで。
でも人の恋路はジャマしたくないし
・・・で
結局、彼女の教室前廊下にしゃがみこんでの待機!

「・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」

窓が開いているせいか、2人の会話はよく聞こえない。
ぼんやりしていると、突然、

「ばかじゃね!」
女の声が張りあがった。
(へ?・・・女の声って事は・・例の畑野さんだよな?)

と、次に
「なに言っちゃってるワケ?!」

(・・は?あぁ?あ?????)

や、やっぱ、桃弥の言うとおりハンパなく強敵っ??一体どんな女
・・・って・・
「わっ!」
扉にかけた手が滑って、俺は前のめりで教室の中に入ってしまったっ!!


「!!!!!」

すぐさま俺の方を向いた畑野さんという女!!
スゲ・・っ、目ヂカラっ・・・

「あ、ーっと、桃弥、・・悪ィ・・・その・・スゲーセリフが聞こえたもんでさ・・」
ぷっと笑う桃弥。   (?????)


「な・・んで・・藤木・・薫・・が?!」

(へ?ってか何?この畑野さん、俺の事知ってる?・・あ、そっか。女子達からでも聞いてたんか。)

「薫は俺の親友だから、心配してくれたんだよ、姫」

「・・・・・ふ・・~~~~ん」 そう言って畑野さんはうつむいた。

?なんか・・さっきとイメージが?
―・・ワケわかんね――な、この女!
超、不機嫌な顔で俺は桃弥を見る。それに気づいた桃弥はニコッと笑って、
「薫、終わったから帰ろ」と言い、教室を出ようとした。

「え?桃弥?言ったのか?あ?なんだよ」

「言った・・・」
桃弥は振り向かない。

俺は畑野さんの方を向いた。

その時・・・俺は初めて畑野さんを見た。
セミロングの茶色の髪が・・風にゆれて・・細い首に巻きつく・・

その上にある顔は・・・
キレイな・・・・て、つい見とれてしまった。

女の顔をこんなにまともに見たのは何年ぶりだろう・・・・・・。


―――――・・はっ・・っ!
(ちっ!不覚にも・・この俺が女に見とれてしまったっ!)

そんな俺を無視して畑野さんは桃弥の方へと歩いていった。
そして・・

「桃、私に惚れるなんてウザイ事しないで!」

――――っなっ!!はっ?!

「ああ・・ごめん姫。」

あやまるかっ?桃弥っなんでっ?!!

「じゃーね。」
笑って教室から出ようとする畑野さん

ブチッ

「コラ!てめ――っ!一体、何様なんだよっ!」 マジでブチぎれた!
「桃弥が、今までどんな想いでお前の事見てきたと想ってんだっ!!!」


「あんたに・・・言われたく・・・ない。」


「・ ・ ・ ・ は ・ ・?」



その意味不明な言葉についボーゼンとしてしまって・・次の言葉が出てこなかった。
(な、何?言ってんだ?こいつ、マジでワケわかんねぇ女っ!!)

その間に畑野さんはスタスタと教室から出て行ってしまっていた。
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