その後のふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


……兄妹……。


わたしは近くのポストに手をついて、がっくしと首を垂れた。


……兄妹じゃないし……。

やらしくも、ないし……。


……ていうか、失礼だし……!


思い出したように、七瀬さんが歩いて行った方向を恨みがましく見つめる。

彼の姿は、もうとっくに見えなくなっていた。


……なんだかすごい、やな感じの人。

やっぱり、おーちゃんは正しかったんだ。

あのクッキー、絶対、あの人が選んでない……!


そう確信すると、わたしは憂さを晴らすように、305号室のポストを乱暴に開いた。

入っていた封筒を、がしっと摑む。

そして……、空っぽになった小さな箱を見つめて、はあ、と息を吐いた。


……痛いところ、突かれちゃった。

わたし、まだ妹ぽく見えるんだ……。

やっぱり、歳の差のせい……。


……本当に?

……わたしが、付き合う前と変わらず、おーちゃんに寄りかかりっぱなしなのが、傍から見ても感じ取れてしまうんじゃ……。


ザワザワと、心が揺れた。

学校でも感じた、胸の内を急かすような風が吹く。

< 33 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop