その後のふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


「ちょっと! ナルくんがいるのはどういう風の吹き回し?」


驚いて駆け寄っていく美月の後ろに、わたしも続く。

進む先には、康晴と、同じくいつものメンバー、もとい、武藤(むとう)渡辺(わたなべ)優羽(ゆう)ちゃん——そして、なぜか一緒にいる鳴海先生。

みんなにも美月の声は届いたようで、


「おう。先生とは、そこでバッタリ」


こちらに気がついた康晴が、背後の横断歩道を指差して言った。


「どーも。お邪魔してまーす」

「ナルくんも遊びにきたの?」

「違う違う」


鳴海先生が心外だ、というように答える。


「学校側の見回りだよ。君たちが問題を起こさないよう未然に防ぐという、立派なオシゴトね」

「なあんだ。デートかと思ったあ」

「こら。いったいなにを期待してんの」

「先生の彼女が見れるチャンスかと思って。ほら、いざというときに弱みを……」

「悪いことを企むんじゃないよ。怖いなあ」


露骨にがっかりして見せる美月に、先生は愉快そうに笑った。


「でも残念でした。俺に彼女はいません」

「えーっ。それじゃ、わたし、立候補してもいいですか?」


聞き逃すまいと割り込んだのは、優羽ちゃんだった。


「まったく……。先生をからかうなよなあ。本気にするぞ」

「ひゃ〜っ。やだあ、ちょろっ」

「問題はつげーん」


先生の言葉に、キャッキャッと盛り上がる美月たち。

その隣で、武藤と渡辺が心底つまらなそうな顔をしている。


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