とある先輩の、歪んだ狂愛。




「そんな欲張りな俺を……彩は、許してくれるかな…」



両方欲しい、なんて思ってた。
本当にそれは両方が好きだったから。


でも今、ひとつは優しい思い出に変わった。

もうひとつは俺のことを忘れちゃってるかもしれないけど。


だとしても俺は、涼しい夏が好きだ。



「当たり前じゃない。高槻くんが好きなものなら、彩もきっと大好きよ」



涙を拭って、春の始まりの空を見上げる。


4年前のあの日から俺の空はいつも雨空で晴れた日なんか無かった。

どしゃ降りの豪雨。

雷だって遠くで落ちていて。



「俺…大学で心理学を学びたいんです」


「まぁ、そうなの」



それは罪滅ぼしなのかも、今はよく分からないけど。

だけど人の心理を学ぶことが救いの手になるんじゃないかって思った。

代々教師として続いてきた家系を崩して心理学の道を選んだ俺。



「彩を救えなかった分も…いろんなことを知っていきたいから」


「…高槻くんのような心優しい人に色んな子が救われる未来が想像できるわ」



< 224 / 242 >

この作品をシェア

pagetop