今は秘書の時間ではありません
月曜日…
秘書室へ出勤する前に総務へ行き退職願について話してきた。
私の意思は変わらない。
週末も腹立たしくて仕方なかった。
なんで私は試されていたの?
挙句、私には秘密裏に動いていたってことは私は認められなかったってことでしょ。


始業時間ぴったりに秘書室へと入る。
こんなことはこの4年間一度もなかった。
私は1時間以上早く出勤し掃除やメールチェックを済ませていたからだ。
でももう私がメールチェックしても必要とされていないことがわかった。リゾートホテルの計画もなくなるなら不要の業務だった。
今日から退職まで1ヶ月みなさんの補佐にまわり、有給消化させてもらおう。

秘書室へ入ると室長から早速呼ばれた。
金曜に私は言うことだけ言って帰ってしまったから、退職理由を聞かれるのだろう。

もういいや、一身上の理由で…。

室長に呼ばれ一緒に会議室へ入る。
するとすぐに社長と橋本さんも入ってきた。

社長は改めて、
「申し訳なかった。友永さんが優秀だとわかっていたのかな困らせ続けてしまった。もう困らせることはしないと誓う。辞めるなんて言わないでくれないか。」

「無理です。もう総務に話してきましたから。」

「そんなこと言わないでくれよ。会社を盛り返す手伝いをして欲しい。」

「社長のためにこの数ヶ月お仕えしましたが全く意味のないことだったとわかりました。意味のないことのために毎日奔走しておりました。もううんざりです。これからどう考えても社長をお支えしたいとは思えません。」
 
「…」

「私は秘書としているつもりでしたが何の意味もなかったんですね。ただ、社長に試されていただけでしたから。それにお姉さん方の後処理をさせられ、私のせいにさせられ、私がどれだけ皆さんから悪態つかれたかなんてご存知ないでしょう。直接怒りに来た方に頭を下げていた私を知らないでしょう。」

「…」

「これだけご説明しても退職は認められないのでしょうか。それともまだ他にもあるので更に詳しくご説明が必要でしょうか。」

社長は助けを求めるように室長を見る。

室長は、
「本当に申し訳ない。こいつが社内を見極めるためにしたことが君の負担になってしまったことは俺も謝るよ。それにこいつの度が過ぎたことも謝らせてくれ。俺たちからキツく言って聞かせたから。」

「俺も友永さんと働いて日は浅いが君が優秀だと言うことは分かったよ。だから俺らと同志になってくれないかな。こいつ本当はできるやつなんだ。あと少しこいつを見離さないでやって見てもらえないかな。」

室長と橋本さんからこう言われるが私の考えは変わらない。

「無理です。申し訳ありません。もう社長の為に頑張る気力が無くなりました。」

3人で顔を見合わせた。
そりゃそうだ、聞けば聞くほど俺はひどい上司だ。
他人を見極める前に自分を振り返るべきだった。
そんなこともできないでトップなんて言えないな。
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