今は秘書の時間ではありません
会議室へ向かう直前、歩きながら社長に話しかけられた。

「友永さん。資料追加を頼んだんだよな。でも、社長室から言われてもこう言うことするんだよ。甘く見られたもんだ。君には申し訳ないことをしたが俺はどのくらい会社を大切に思い会社のために動いてくれるのかを知りたかった。いきなり来た社長への忠誠心を知りたかった。」

「…」

「みんなこういうことするんだよ。どうせわからないだろ、ハンコ押しときゃいいんだよ、と言わんばかり。今までもそうだ。君が補ってくれなければ何も分からない資料だった。きっと俺用に手抜きを渡しているんだろう。でもそれを見てもわからないだろうって。」

「…」

「MBAまでとって経営の勉強してきたよ。それに他社で働いてきた経験もある。それを知ってるのに最初からいきなりきた社長だから何も知らないだろうと見下してきた。それで俺もあんな手に出た。」

「そこではっきり言えばこんなまどろっこしいことにはならなかったのではないですか?ホテル事業案を見直すお達しを出せばよかったと思います。」

「ハハハ…そうとも言えるな。みんなに無駄な労力を使わせたかもな。」

あ…ついキツイ言い方になっちゃった。

「申し訳ございません。失礼なことを言いました。」

「人間はこうやって間違ったことをして成長するのかもな。でもすぐに謝れる君は偉いよ。すぐに自分を振り返れてさ。」

「そんなことないです。」 

「さぁ、ひとまずひっくり返してこよう!」
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