もらってください、花宮先輩。〜君の初めてが全部欲しい〜
先輩が一人いるだけで、私の狭くて息苦しい世界が優しく広がっていく。
ただ優しいだけじゃない、違うことは違う、そうじゃないよと教えてくれる。私は先輩と出会えてこうやってお付き合いできたことで、これから生きていく運を全て使い果たしているのかもしれない。
それくらい、なんだかすごく感動した。
この気持ちを言葉にするのが恥ずかしくて、お弁当に夢中になるふりをして先輩がくれた卵焼きを食べる。
すると、お出汁がじゅわっと出てきて、刻みねぎがシャキシャキで唸るほど美味しかった。
「俺もね、最初からこうだったわけじゃないよ」
「へ?」
「告白されて、相手の傷付く表情を見るのが嫌で、曖昧に答えたりしてたこともあった」
先輩は食べ終えたお弁当箱の蓋をパタリと締めながら、壁に寄りかかって雲ひとつない空を見上げる。