もらってください、花宮先輩。〜君の初めてが全部欲しい〜
────現在5月中旬。高校に入学して一ヶ月以上が経った。
高校生になったら変わろうと決意し、いざ入学してみると、思った以上にクラスメイトが大人びていた。けど、波風立てずに周りに合わせようとしていた私も、とりあえず頑張って溶け込めるように努力をした。
なんとなく席が近いと言うだけで、私が最初に入ったグループも、みんなが恋や彼氏に夢中だったことから、私はみんなの会話を聞くだけのポジションにいる。
そして、頷くだけの私に友人達はいつも言う。
「奈湖も、早く彼氏作りなよ。好きな人いないの?」
「あはは、えーっと……いないかなぁ」
「早いとこ、初カレも初キスもしておいたほうがいいよ!捨てちゃいな!」
「……う、うん。そうだよね」
「今度いい人紹介するから」
「ありがとう……」
「奈湖小さいからね〜あんまり大きすぎない、威圧感ない人が良さそう」
「そ、そうだね」
リップを塗り直しながら私にチラリと視線を向けた友人は、ニコッと綺麗に笑う。これはモテる、男子の気持ちがわかる。
けど、初めてを捨てるって……高校生になるとこんな恐ろしいことを言われるのか。顔が引き攣る。私はどちらかというと、初めては捨てるよりも大切にとっておきたいタイプだなぁ。