もらってください、花宮先輩。〜君の初めてが全部欲しい〜




 それを、よく知りもしないくせにこんな場所で、たくさんの人の目がある場所で言うなんて。


 怒りが腹の底からじわじわと沸き上がる。けど、怒りに任せずとにかく止めなきゃ、この場をどうにか納めようと立ち上がろうとした時、高野さんが大きな溜息が響いた。


 その音で、松井さんの笑みが引き攣る。



「知ってるよ?……だからなに」
「……え、知ってるって」
「知ってる。みんなが私みたいな人間を疎ましいと思うことくらい、理解してる」



 とても静かで、とても低い声だった。その声色には諦めも感じる。背の高い高野さんは、ジッと射抜くように松井さんを見つめた。


 知ってると言う言葉に、松井さんは一歩後退した。弱らせようとした言葉で相手は動じていない。驚きを隠せないのだろう。



「そんなことじゃ、私は傷付かない。文句を言いたいなら生活指導の先生へどうぞ。私は言われた通り、委員会の活動をしただけだから」



 高野さんはそう言うと、松井さんを避け、教室から出て行ってしまった。


 教室中の視線が自分に集まり、松井さんは再び真っ赤になる。




「な、何なのアイツっ!!」




 松井さんと取り巻き達は、慌てたように教室から出て行ってしまった。それと同時に、教室内の張り詰めた空気は一気に緩む。




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