とある企業の恋愛事情 -ある社長秘書とコンビニ店員の場合-
第7話 君の笑顔は僕の優しい陽だまり
 翌朝、俊介は一番に聖に昨夜のことを報告した。あの店を教えてくれたのは聖だ。そういう店に詳しくなかった俊介は、聖のおかげでことなきを得たのだ。

「喜んでくれたのならなによりだわ」

「お前のB級グルメ好きも役に立ったな」

「酷いわね。せっかく教えてあげたのに」

「感謝してるよ。おかげで向こうも気にせずに食事できたみたいだ」

 結局会計は綾芽が出してしまったが、代わりにランチを作る約束をしたからいいだろう。

 食事したおかげで綾芽のことを色々聞くことができた。綾芽も少しは打ち解けてくれたようだ。

「でも、向こうも俊介が社長秘書だなんて知って驚いてたんじゃない?」

「いや……それは言わなかった」

「え? どうして?」

 綾芽はかなり気をつかうタイプの人間のようだ。もし社長秘書だなんて分かったら、萎縮して食事が台無しになってしまう。平社員だと言っておけば気を使わずに済むだろう。

「立場が邪魔してコミュニケーションが取れないこともあるだろ」

「そうね……。でも俊介はそれぐらい彼女とコミュニケーション取りたいってことよね?」

 聖は嬉しそうに笑った。

「そうじゃない。ただ心配なんだ。いろいろ聞いたし、頑張ってる子だから……」

「そっか。じゃあ、私もまた今度コンビニにお邪魔しようかな。あそこの煎餅おいしいのよね」

「必要なら俺が買ってくるよ」

「彼女に会いたいから?」

「……そうじゃない。業務に集中してもらうためだ」

 聖は俊介を見てクスクスと笑いを堪えた。本堂と結婚したせいか、随分人をからかうのが上手くなったようだ。

 だが、彼女がいうような理由ではない。本当に気になるから、それだけだ。

 綾芽は恋愛などに興味なさそうだ。以前も男を振っていたし、もしちらりとでもそんな感情を見せたらこなかったに違いない。

 自分たちは決してそんな関係ではないし、そんな関係になることはないだろう。
< 24 / 131 >

この作品をシェア

pagetop