堂くん、言わないで。


あの後お昼やすみが終わって、どこか夢心地のまま教室に帰ったら

「おかえりー」って何事もなかったように出迎えてくれた。


そのことにすこしだけホッとして、また輪に加わって。



……わたしのこと、どう思ってるの?

とは最後まで聞けなかった。



『それにしても、俺のカイロになれ、ねえ?』

「なゆちゃん、言われたことある?」

『全人類でみくるだけだと思うよ。んなこと言われたの』

「そうだよね……」


『俺の女になれ、は言われたことあるけど』

「そ、そっちのほうがよかった……」


ほんとう、頭を抱えそうになる。

どうしてわたし、いいよって言っちゃったんだろう。


しかも明日から放課後、会うことになっちゃったし。



お風呂あがりでぽかぽかしている身体。

ふと、堂くんの身体が冷たかったことを思い出す。


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