堂くん、言わないで。
彼女たちにも聞こえたようで、しんと静まりかえる図書室。
振りかえると、
閲覧席にいた“彼”が、起きあがって彼女たちを睨みつけていた。
「騒ぐなら余所でやれよ。お前ら、ここがどこだかわかってんの?」
「っ、……行こ」
いつもなら反論してもおかしくないのに。
さすがのルナちゃんも彼にかみつく勇気はないみたい。
ぎゅっと唇をかみ、みんなで顔を見合せたあと、ばたばたと走り去っていった。
見つからないように物陰に身をひそめていたわたし。予想外に予想外が重なって、心臓がどっくんどっくん騒いでいた。
「あ……」
……もう行ったかな。
そう思って顔をそうっと出すと、
ばちり、彼と目があった。
──────堂 恭花。
いつも図書室にいる、男の子。
クラスは違うけど、彼もわたしと同じ学年だった。