堂くん、言わないで。


たしかにその通りだと納得してしまう。



……わたしの気持ち。


他の人じゃなくて、わたしの気持ちを棗くんは知りたがってる。




「なつめくん」

『うん』

「……行きたい。夏祭り」

『うん。一緒に行こ』



穏やかでやさしい声色に、わたしはほっと安心する。


気が抜けたように肩の力をぬいて、ありがとう、と言おうとしたときだった。



堂くんがわたしのスマホを奪って、通話終了のボタンを押した。


いきなりのことにぽかんとして、すぐにぎょっとする。



「なんで!?」

「3分経ったから」

「いやだから、なん」

「お前のエネルギーは3分しかもたねーだろ」

「わたしはウルトラマンかな!?」



ぐっと押しつけるように返されたスマホをあわてて確認する。

画面はすでに真っ暗だった。



……なんでこんなことするかな。


その身勝手な行動にさすがにむっとして。



「勝手にすればって言ったのに……」


わたしはぼやくように呟いた。


< 76 / 257 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop