堂くん、言わないで。


「どうして優しくしてくれるの?」

「優しくしてるつもりはない」

「でもこうして、だ…抱きしめてくれる」


これは優しさっていうんじゃないの?


それとも男の人はこうやって、誰にでも抱きついたりできるものなのだろうか。

免疫も経験もないわたしには想像もつかないけれど。


すると堂くんはしばらく考えたあと、



「最初、声かけたのはお前があまりにも不憫だったから」

「うっ、不憫……」

「でも、こうして抱きしめてるのは、別にお前のためじゃない」

「はあ……」



それはつまり、ええと……どういうこと?

わたしの理解力が乏しいのか、まるで思考が追いつかなかった。



「安藤みくる」

「は、はい」


低い声が耳打ちする。

名前を呼ばれただけなのに。
どうしようもなく鼓膜を甘く揺らす響きに、あやうく呑まれそうになる。


酔ってしまったかのように、くらりときて。





「俺のカイロになれ」

「……はい?」



そして一気に現実に引き戻された。




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