愛され、囲われ、堕ちていく
ガタン━━━━
環奈が部屋を出ていく。

「環奈さん、もう出ていったよ!もういいでしょ?」
「んー、ほんとは途中でやめるつもりだったけど、凪が煽ったからこのまましよ?」
「え……ちょっ…や……あぁ…あ…」
「凪のその可愛い声も表情も、俺にとっては煽ってるようにしか見えねぇ……」

結局そのまま抱かれ、果てた凪沙だった。

「敬太さんや臣平さん達は、どうしてるの?」
「ん?とっくに帰ったよ!」
ベットの背もたれにもたれて座っている伊織。
いつものように煙草を吸いながら答えた。
「そう…環奈、さん…どうなるの?」
「どうって?」
「だから……」
「んー別にどうもない。とりあえず、もう二度と会わないようにはした」
「そう…」

【30前のただの何の取り柄もない女じゃん!
どうやって伊織様に、取り入ったの?】

「そうだよな……」
「凪?」
伊織は煙草を灰皿に捨てて、凪沙の首の下に腕を滑り込ませて横になった。

「どうした?凪」
今にも泣きそうな凪沙の目元を、なぞるように拭った。
「伊織は…」
「ん?」
「私の、どこがいいの?」
「は?」
「やっぱ、私にはもったいないよ…伊織は」
「俺にはないものを持ってるから」
「え?」
「俺にはないから。
凪みたいな、純粋で綺麗な心。
自分より他人を大切にする思いやり。
自分を犠牲にして、他人の幸せを願う事。
そうゆうの、俺には存在しない。
俺は、俺が幸せになることしか考えてない。
だから、凪なことも囲ってんだよ。
紅音によく言われる。
最低・最悪な男って。
せめて、凪の幸せだけでも考えてやれって!
でも、無理。
俺には………」
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