【コミカライズ】結婚前日に「好き」と言った回数が見えるようになったので、王太子妃にはなりません!
「前例がないといけない、だったかしら。私、そういう話を聞くたびに不思議に思うわ。その前例を最初に作った人は、同じように責められたのかしら」
「責められたのでは? 王族は、ことさら伝統に厳しいでしょう」
「厳しいわね。でも、不可能ではなかったのよ、レオン」

 丁寧な王妃の言葉に、レオンの視界が晴れた。

「……前例があるかどうかは、重要ではないと?」
「ええ。王族の結婚を認めるのは国王陛下。あなたのお父様に認めてもらえば、最初の人になれるわ。書庫に籠っているより、毎日、国王陛下の執務室に押しかけて、キャロルちゃんへの想いを打ち明けた方が、心は動くと思うわよ」
「そうします」

 レオンは、カップの紅茶を飲み干して、席を立った。
 姿勢を正して腕を直角に曲げる、騎士団式の最敬礼を王妃に向ける。

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