不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました～エリート御曹司と育み婚～

　


「あの、先生」

「はい」

「私……本当はここに来るまでは、もし最悪の事態になった場合は、私よりもお腹の子を助けてくださいって言うつもりだったんです」


　静かに話し始めた私に、そこにいる三人の視線が集まった。


「でも、私……。できれば私自身も、生きていたいと思うんです。産まれてきたお腹の子を、力いっぱい抱きしめたい。何よりこの先何十年、主人とこの子と一緒に生きていきたいと思うんです。だから、私も精いっぱい生きることにしがみつきます。どうか、お腹の子と私のことを、よろしくお願いします」


　自分でも、とんでもないワガママを言っている自覚はある。

　だけど、これが今の私の本音で、たどり着いた答えだった。

　結婚して子供ができて、ようやく灯との間にできた溝が埋まって、お互いの目を真っすぐに見て話ができるようになった。

　それなのに、ここで終わりになるなんて絶対に嫌だと思った。

　もっともっと私は灯のそばで、お腹の子と一緒に笑っていたいし、灯がこれまで私を愛してくれていたように、私も灯のことを愛していきたい──。


「僕からもお願いします。どうか、妻とお腹の子のことをよろしくお願いします」


　隣に座っていた灯が、机に額がつきそうなほど深く頭を下げた。


「もちろんです。我々も、ベストを尽くします」


　力強く答えてくれたのは主治医の志村先生だ。

　その隣に座る森先輩は、私達を見てとても穏やかな笑みを浮かべていた。