今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
どっ、どうしよう。まさか向こうから来るなんて思わなかった。


完全に油断してたのであたふたした。


「はい」


急いで返事をしたけど声がうわずってる。


「あ、少し待って」


そうだ今日はめずらしくドアに鍵をかけてたんだ。


部屋着のワンピースにカーディガンを羽織ってからドアをそっとあけた。


ドアを少しだけ開けて、細い隙間から見上げたら兄が苦笑している。


「チー、帰ってたんだな。入ってもいい?」


「えっと、あの」


「どうかした?」


「あ、でも」


「なにもしないよ」


彼にそう言われて見透かされているみたいでドキッとした。


警戒してるのバレちゃってる?


「……」


「お兄ちゃんのことが信じられない?」


柔らかな笑顔を向けられたら、ちょっとホッとする。


ズルすぎるくらいの優しくて綺麗な笑顔。
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