今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
『でも、呼び捨てはむりだよ』


『そうか、じゃあ、くんをつけてもいいからもう一回呼んで』


彼は私の肩にそっと腕を回すから距離がぐっと縮まって。


目と目が合うと微笑み合った。


小さいころからこんな風にくっつくように体を寄せあうのはごく自然なこと。


兄の体温を感じるとそれだけで心が満たされて安心する。


『翔くん』


出会った時からお兄ちゃんって呼んでるからこんな風に呼ぶのは初めてかもしれない。


真っ直ぐに見つめられて、少し緊張しながら口にだしてみた。


『もういっかい』


『翔くん』


『もっかい』


彼が嬉しそうに瞳を細めるから求められるままに何度もその名を呼んだ。


あれ、凄く喜んでるみたい。どうしてそんなに?


最後に彼はこんな風に言ってきた。
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