今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
それがちょっと不満っていうか寂しかったりする。


私って筋金入りの甘えん坊かな。


『しょーくんのケチ』


『はぁ、誰がケチだよ』


『……』


『おい、チー』


何回か背中を揺さぶられたけど、もう眠くて瞼があがらなかった。


『やばいんだって、もう……』


お兄ちゃんの切なそうな声がした気がした。


『おにいちゃ……すき……』


意識が遠のいていくのを感じながらも呟いていた。


毎日のように好きって言葉があふれてくる。


おやすみやおはようの挨拶と同じくらいごく自然に言いあっている。


『俺も好きだよ、チー』


『ん』


その返事に満足して頬が緩んだ。


んー、もう電池切れ、とうとう深い眠りへ落ちていく。


だからこの後のことが夢か現実か曖昧なものになって。


『おいおい早速、お兄ちゃんって呼んでるし』


『……』


『約束通りキスするよ』


『……』


手のひらに熱くて柔らかな感触がして心地いい。


『なんにも知らない可愛いお姫様。
俺はもう……限界なんだよ』


かけ布団の上から優しく抱きしめられていることには気がつかなかった。


『もうお兄ちゃんなんてやめるよ。
だからこれからは……』


この時まだ私は想像すらしていなかった。


彼が名前で呼んで欲しいって言ってきた意味を。


兄の心にそっと秘められた激しい想いを、何にもわかっていなかったの。
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