今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
「ただいまー、あらお出迎え?」


母の呑気な声が玄関に響き渡る。


俺が出迎えにきたと勘違いしていてニコニコしてる。


両親は同じ職場なので毎日たいてい一緒に帰ってくる。


この2人、再婚して10年が経つけど今でも凄く仲がいい。


瀬戸の父は温和な性格で家庭的な人だ。仕事人間の伊集院の父とはまるで違う。


母は再婚して本当に幸せそうなので、良かったと思ってるし感謝もしてる。


「おかえり」


すぐにポーカーフェイスを作って出迎えた。


今の今まで、妹といちゃついていたって感づかれないようにしないといけない。


「荷物持つよ」


父が持っていた買い物袋を受け取った。


「お兄ちゃんありがとう、ほんとに気が利くからいつも助かるよ」


父が優しい笑顔を浮かべて嬉しそうにお礼を言ってきた。


「あ……いや、このくらい」


「千桜は?」


「部屋にいるみたい」


「そうか」
< 254 / 443 >

この作品をシェア

pagetop