今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
「うそ、今なんて……。付き合ってるとか聞こえたけど」


「違うの、そうじゃなくて」


だけど、私のこの焦り方が余計マズかった。


私の様子を見て彼女は確信したみたいだった。


「本当に付き合ってるんだ、なにそれ。兄妹なのにそんなのズルい」


「待って。違うの」


慌てて何か言おうとしたけどうまい言い訳が浮かばない。


「愛華さん、落ち着いて」


「どっちから?ううん、わかるわそんなの聞かなくても。お兄ちゃんがあんたのことを好きなのはすぐに分かったし。でも」


ドアの方へ歩いて行く彼女の背中に声をかけた。


「待って行かないで」


「兄妹だから、言えっこないって思ってたのに」


出て行こうとする彼女をひきとめようと手を伸ばした。


パシッ。


だけど、直ぐにその手を振り払われた。


「誰にも言わないで、お願い」


どうしよう、秘密にしていた事なのに。


よりによって彼女に自分から暴露してしまうなんて。


さっきの自分を思い切りひっぱたいてやりたいくらい激しく後悔した。


「待って、愛華さん。今のは」
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