今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
ドアを開けるのと同時に叫んだ彼は、息を切らせて部屋に足を踏み入れた。


「チー?お腹が痛いって?」


「えっ」


彼は心配そうに歩み寄ってきて布団を勢いよく剝いでしまった。


「どこ?ここ?下の方か上の方どっちだ?」


「わあ、ちょっとどこ触ってるの。くすぐったい」


半袖に短パンの部屋着を身に着けている私のお腹を兄がいきなりさすってくるから慌てて振り払おうとした。


「恥ずかしがってる場合か。痛い場所によって薬が違ってくるからちゃんと答えて」


「ええと、薬って?」


「旅館の人から何種類か貰って来た」


「そ、そうなんだ……」


旅館の人たちまで巻き込んじゃって、いまさら仮病ですって言いずらくなっちゃったな。


「どうして頭を冷やしてたんだ?頭も痛いのか?」


彼は怪訝な目でじっと見つめてきた。


「え、ええと」
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