【完】王子様系男子の哉斗くんは、毎日会いに来る。



 確かに美央ちゃんは、親父が持ってきたお見合い写真の一枚だった。だけど、その中で1人選んだのは俺自身だ。

『親父、俺この子がいいわ』

『あぁ、その子か……五十嵐さんとこの』

 あの時既に、父親に美央ちゃんが耳のことを教えてもらっていた。それでもなぜだか彼女にとても惹かれた。

「……超可愛いんだよ」

「ベタ惚れかよ。あ〜あ、俺も可愛い婚約者ほしいなぁ」

 コイツと話している場合じゃない……今から寄らないといけないとこあるし、早く学校出ないと。


「哉斗くん! 今日暇? 良かったら一緒に」

「無理、今から婚約者のとこ行くから」

「え! 哉斗くん婚約者さんがいるの!?」

 あー! もう、うるさい。
 海斗のせいで、足止め食らったじゃねーか。勘弁してくれよ。

「いるよ。だからどいてくれる? 今から会いに行くんだ」

 俺がそう言うと、「あの噂本当だったんだ」「狙ってたのにぃショック〜」などの声が教室の外でも聞こえてくる。しかも廊下は塞がれ、キャーキャーと黄色い声が耳に響いて本当にうるさい。
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