あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお受けいたしかねます。
「しかもすごく敏感だ。胸だけで()けるなんて最高だよ」

彼はそうながら、まだ整わない息のせいで上下するわたしの胸を、下から掬い上げるように手で包む。

「ホイップたっぷりのパンケーキよりもずっと魅力的だ。―――お望みとあらば、もっと気持ちよくしてあげるけど?」

そう(のたま)った男は、今度は腰のラインを下に向かってスルスルと下り始める。

けれど、「あっ!」と何か思い出したように動きを止めた。

「その前に―――おはよ、静さん」

にこりと無邪気に笑うと、わたしの唇に「ちゅっ」と音を立てくちづけた。


「こ、こ、こっ……」

「ん?どうかした?」

彼が眉をひそめ、小首を(かし)げる。クセのある前髪がすぐ目の前でサラリと傾いた。

まるでCMのワンシーンのように(さま)になったその仕草を前に、わたしは肩をふるふると震わせる。
すると彼は突然眉をパッと開いて、瞳をキラキラさせながら言った。

「あっ、朝だからニワトリか!」

―――んなわけあるか!

「こぉぉんの~~ドラネコめっ!わたしはスイーツじゃないっ!」

叫ぶと同時に、渾身の力を込めて彼の額にデコピンを繰り出した。

「いった~!」と声を上げ、額を押さえながら悶絶している男。その体を押し返すと、わたしは全身全霊の怒りを込めて叫んだ。

「―――おすわりっ、アキ!」

瞬く間に彼はわたしの上から退き、ピシリと背筋を伸ばして正座した。







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