年上王子の不器用な恋心

さっき、千尋くんはタクシーで家まで送ってくれた時に親に挨拶しようかと言い出した。
どういうつもりでそんな風に思ってくれたのか分からないけど、千尋くんの誠実な部分が垣間見えた。
だけど、タクシーを待たせてしまうことになるし、いきなり千尋くんが家に来たらお母さんは大丈夫だと思うけど、お父さんが間違いなく驚くので今日はそのまま帰ってもらうことにした。

「じゃあ、立花さんのお陰なのね」

「そうなの。もう立花さんに足を向けて寝れないよ」

笑って言っていたら、ふと誰かの視線を感じてリビングのドア付近に視線を向けると、お父さんが顔を覗かせていた。

「あーゆー、今の話は本当なのか?」

「ゲッ、お父さんっ」

「ゲッとはなんだ。あゆ、あの小僧と付き合うのは本当なのか?」

小僧って……お父さんは失礼なんだから!

「残業お疲れさま。まずは手洗いうがい足洗いが先でしょ。ほら、早く行って」

「でも、あゆの話が」

「つべこべ言わない。さっさとお風呂に入ってきて。はい、行く!」

レッツゴーと言わんばかりにお風呂場の方にビシッと人差し指を向けた。
こうなったらお父さんはお母さんに弱いんだ。
渋々といった様子でお風呂場に歩いていった。

お父さんは書斎にいるかと思っていた。
夢見心地で家に入ってきたので、ガレージに車があるか確認してなかった。

私はお母さんにフォローを頼み、お父さんの追求からどうにか逃れることが出来た。
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