年上王子の不器用な恋心

オーナーが若い頃はずっとお店に立っていたみたいだけど、ここ最近は夜しかお店に出ていない。
年には勝てないとオーナーが笑いながら言うけど、見た目が若いから六十代には見えないんだよなぁ。

今はオーナーの息子の颯さんと娘の茜さんがメインでお店を仕切っている。

颯さんもオーナーに似ていて、かなりのイケメンだ。
彫りが深く、目鼻立ちがハッキリしている細マッチョ。
その颯さん目当てで来る人も少なくないと思う。
基本、料理を作っているからあまり表には出てこないけど、人手が足りないときは颯さんも接客している。
その時のお客さんは、レアキャラに遭遇みたいな感じで颯さんの接客はすごく喜ばれている。

カフェタイムでは、パティシエの茜さんの作るケーキが大人気だ。
私は茜さんのシフォンケーキが大好きで、従業員割引を使ってホールで買っているぐらいだ。
お店ではホイップクリームを添えているけど、私はそのまま何もつけずに食べる方が好み。

茜さんが作った試作品を食べれることがここで働いている特権だ。
ただ、食べるだけじゃなく味や見た目の感想を求められるので責任は重大だけど。

「あゆ、昨日の同窓会はどうだった?」

準備をしている時に声をかけてきたのはバイト時代からの先輩の池田頼人、二十三歳。
通称、池っち。
私は短大を卒業して正社員になったけど、池っちはバイトを継続中。
< 23 / 134 >

この作品をシェア

pagetop