年上王子の不器用な恋心

フックの先にはハート型のローズクォーツがついている。

「これ……」

さっき、映画までの時間にいろんなお店を見て回っている途中にあったジュエリーショップで見かけたピアス。
ガラスケースに入っていて、私が一瞬立ち止まり見ていたものだ。

「欲しかったんじゃないのか?」

「どうして……」

「そりゃ、あんなにガン見していたら欲しいのかと思うだろ。でも、あゆは買うそぶりもなくその場を後にするから気になっていたんだ」

「でも、買いに行くタイミングはなかったでしょ」

「あゆが服を見ている隙に買いに行った」

サラリとそんなことを言われ、嬉しくてたまらない。
そう言えば、お店を出たら千尋くんの姿が見えない時があった。
戻ってきた時に「トイレに行っていた」と言っていたけど、その時に買いに行ってくれていたんだろうか。
だけど、このピアスの値段を知っているからもらうのに躊躇してしまう。

「本当にもらっていいの?」

「当たり前だろ。あゆのために買ったんだから。逆にいらないって言われたら俺の方が困る」

「ありがとう。一生の宝物にするね」

蓋を閉めると箱を抱きしめるように胸元へ持っていった。

「一生は大げさだろ」

「千尋くん、大好き」

そう言って千尋くんの胸にもたれかかると、包み込むように抱きしめてくれた。
こんな幸せなことがあってもいいんだろうか。

私は千尋くんの腕の中、多幸感に浸っていた。
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