年上王子の不器用な恋心
「それと、さっき意地悪なことを言ってごめん。一ノ瀬さんが遊ばれてないかって言ったのは訂正するよ」
「どういうこと?」
意味が分からず首を傾げる。
「同窓会で会った時のあの人の目はマジで怖かった。こんな年下の俺にバチバチに牽制してきたからね」
牽制って千尋くんが?
信じられない言葉に目を丸くした。
私はその時の千尋くんの顔を見た訳じゃないし、彼女だと言われて頭がパニックになっていたからあまり覚えていないんだ。
「一ノ瀬さん、本当に大事にしてもらっているんだね。もっと自信を持っていいと思うよ」
内藤くんが笑いながら言う。
本当にそうなら嬉しいんだけど。
「ありがとう」
内藤くんにお礼を言うのも変かなと思ったけど、言わずにはいられなかった。
「そういえばさ、梅雨なのにあまり雨が降ってないよな」
内藤くんはサラリと話題を変えてきた。
「確かにそうかも」
テレビのニュースでも今年は雨が少ないって言ってた気がする。
「雨ってさ、降りすぎても困るけど降らなくても水不足とかになって大変だよな」
他愛もない話をしていたら、あっという間に私の家に着いた。
「一ノ瀬さん、これからも友達として仲良くしてくれると嬉しい」
改まって内藤くんが言うので、私は力強く頷いた。
「うん、それはもちろんだよ」
「じゃあ、また」
「送ってくれてありがとう」
私は手を振りながら、内藤くんを見送った。