年上王子の不器用な恋心

「初めまして。一ノ瀬あゆです」

失礼のないようにきちんと挨拶した。

「あゆちゃん、こちらは俺の婚約者の河野梨音さん」

こ、婚約者!
素敵な響きに一人興奮してしまう。

「初めまして、河野梨音です」

紹介された女性はふわりと笑う。
二人の幸せオーラにドキドキしてしまう。

「失礼します」

美香ちゃんがお冷をテーブルに置いてくれた。
私はアイコンタクトで「ありがとう」と美香ちゃんに伝えた。

「ご注文がお決まりになりましたら、おっしゃってください」

「あゆちゃん、なんかおススメある?」

立花さんに聞かれ、私はテーブルの上のメニューを見る。
時間帯はカフェタイム。
比較的よく注文があるのは三種盛りのケーキセットだ。

「全部おススメと言いたいところですけど、個人的には三種盛りケーキセットがおススメです。お好きなケーキを三種類選んでいただき、お飲み物もそちらに書いてある中から選べます。甘さ控えめのケーキもありますので、よろしければ是非」

「へぇ、いろんな種類が選べるのはいいね。ありがとう」

「では、お決まりになりましたら、またお声がけください」

頭を下げて背を向けた。

美男美女のカップルって目の保養になる。
二人のラブラブを裏付ける様に、お互いの右手の薬指に、多少デザインは違うけど同じような指輪をしているのを見てしまった。
それに気づいて、ニヤニヤしてしまったのはここだけの話だ。
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