私が素直になったとき……君の甘過ぎる溺愛が止まらない

3.きっかけ……?




 今、本屋にいる。


 今日は楽しみにしていたマンガの単行本の発売日。


 そのマンガは幅広い世代にとても人気。

 私もその中の一人で、一巻から揃えている。


 わくわくしながら、そのマンガが置いてあるところに行ってみると。

 売れ切れ。

 販売日は未定となっている。

 残念。

 また販売するまで待つしかないのかな。

 だけど、その日が来ても、また売れ切れてしまうかもしれない。

 だから。
 注文しようかな。


 そう思い、レジのところへ……。


「遥稀」


 向かおうとしたとき。

 名前を呼ばれた。


 その声は……。


「松尾……」


 高校を卒業してから十五年。
 ばったりでも一度も松尾と会わなかったのに。


「偶然だな」


 偶然、合コンで会ってからは。
 こうして、ばったり会うから。


「そうだね」


 なんだか。
 不思議。


「遥稀も何かほしい本があるの?」


 松尾にそう訊かれて。
 ほしかった本のタイトルを言って。
 それが売れ切れていたから注文しようと思っていることを言った。


「その本、貸すよ」


 そうしたら。
 松尾がそう言ったから。


「え?」


 貸すって。
 その本は今日発売したばかりなのに。


 って。
 もしかして。


「今、ちょうど買った本がそれだから」


 やっぱり。


「俺が買うとき、ちょうど一冊しかなくて」


 そうだったんだ。


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